こんにちは、公認会計士のなおです。
相続税の申告と聞くと、難しいイメージをお持ちの方は多いのではないでしょうか。
相続税の申告は、亡くなった翌日から10か月以内に行う必要があり、何も知識がない状態ですと何から手を付けていいのかわからず不安になりますし、手際よく行わないと期限に間に合わないなんてことにもなりかねません。
また、相続税は相続財産の金額によっては、相続税の申告をしなくてもいい場合があります。
そこで今回は、相続税の申告が不要な場合とその注意点、相続税がゼロであっても申告が必要な場合について解説していきます。
相続税の申告不要の場合
相続税の申告が不要の場合は以下の場合です。
基礎控除額よりも相続財産が小さい場合には申告が不要になります。
基礎控除額とは
基礎控除額とは以下の計算方法で算定できます。
計算方法
3,000万円+600万円×法定相続人の数
上記の計算式で基礎控除額を算定するのですが、法定相続人の人数によって変動します。
なので、ご自身が相続税を払う必要があるのか知りたい場合は、まずは、法定相続人の人数を確定させる必要があります。
法定相続人の確定
法定相続人とは、相続や遺贈を放棄した人を含んだ相続人のことです。
例えば、以下の場合はどうでしょうか。
例えば
父が死亡し、母と子ども2人の合計3人が父の遺産を相続したとします。
この時、母は父の遺産を放棄したとします。
この場合の法定相続人は母を含めた3人でしょうか、それとも実際に遺産を相続する子ども2人だけでしょうか。
答えは、放棄をした母を含めた3人が法定相続人になります。
法定相続人に、相続の放棄をした人を含めるのは、遺産の相続を放棄するか否かで、基礎控除の額を操作することが可能になってしまうと、
納付する相続税の額を意図的に操作することができてしまうため、放棄した人も含める規定になっています。
相続財産の洗い出し
次に相続財産の洗い出しを行う必要があります。
ここで漏れがあると、申告が不要かの判断を正しく行うことができなくなるので、慎重に行う必要があります。
相続財産には、「プラスの財産」と「マイナスの財産」があり、以下で計算されます。
相続財産の計算
相続財産=「プラスの財産」―「マイナスの財産」
「プラスの財産」には、例えば、預貯金、有価証券、不動産、美術品、車、生命保険金、損害保険金などが含まれます。
「マイナスの財産」には、例えば、借入金、未払金、葬儀費用などが含まれます。
葬式費用には、お布施や通夜の費用、通夜の飲食代、会場借上費用、遺骨の運搬費用などは入りますが、香典返しの費用や、墓地の購入費は含まれないので注意が必要です。
何がプラスの財産で何がマイナスの財産に該当するのかの判断は、税法で細かく規定されており、素人ではかなり難しいです。
不安な方は、相続税に詳しい税理士に相談するのがいいでしょう。
税理士ドットコムには相続に詳しい税理士が多数いるのでおすすめです。
全ての相続財産が基礎控除の範囲内(基礎控除>相続財産)であれば申告が不要になりますが、
下記に該当する場合には申告が必要ですので要注意です!
申告が必要な場合
「配偶者の税額軽減」を利用した場合
小規模宅地等の特例を利用した場合
農地の納税猶予の特例を利用した場合
特定計画山林の特例を利用した場合
相続財産を公益法人などに寄付した場合の非課税の特例を利用した場合
上記の内容は、記事の下で解説しています!
申告が不要と判断する前の注意点
相続財産が基礎控除額より小さく、申告しなくていいと判断した場合でも、相続財産に含めるべきものに抜けがある方が多いです。
抜けてしまう主なものとして下記に列挙したのでチェックしてみてください。
申告不要かのチェック事項
みなし相続財産はないか
一つ目は、みなし相続財産といわれるもので、相続や遺贈によって取得した財産とみなされるもので、主には、生命保険金や退職手当金になります。
亡くなった方が親族には内緒で、生命保険に入っている場合など、親族に知らされていない場合には、申告が漏れるケースが多いです。
生命保険金は、被相続人の死亡届が提出されると、保険会社から税務署に連絡をすることになっているので、隠すことはできないですし、税務調査で発見された場合は、間違いなく相続税の追加納税になるので要注意です。
生前贈与加算はないか
生前贈与加算とは、死亡前3年以内に被相続人(亡くなられた方)から相続人が財産の贈与を受けていた場合、相続人の相続税課税価格に贈与額を加算するものです。
亡くなる直前に相続税を減らす目的で財産の一部を相続人に贈与するケースがありますが、生前贈与加算として相続税の計算に含まれるので要注意です。
相続時精算課税制度の利用が過去にあるか
相続時精算課税制度とは、簡単に言うと、贈与税の支払いを相続時に行う制度です。
被相続人が生前に相続人へ財産を贈与した場合、通常は、贈与税がかかります。
しかし、相続時精算課税制度を利用することで、亡くなった時の相続税の計算時に一緒に計算されます。
相続時精算課税制度は非課税枠が2,500万まであり、税率は一律20%ですので、財産が多い方は利用するとメリットのある制度です。
この制度を適用し、贈与税の支払いをまだ行っていない方は、相続税の計算時に一緒に計算する必要があるので要注意です。
もし、相続財産が基礎控除内であっても、相続時精算課税制度を利用した際の贈与財産が2,500万を超えている場合には、相続税の納付が必要になるので、相続税の申告が必要になります。
相続税はゼロでも申告が必要な場合
配偶者の税額軽減を利用する場合
配偶者の税額軽減を利用し、相続税の納付額がゼロになった場合には、相続税の申告が必要になります。
「配偶者の税額軽減」は、以下のいずれか大きい方の金額まで相続税がかからないという制度です。
配偶者の税額軽減額
・1億6千万
・(課税価格の合計額)×(配偶者の法定相続分)
いずれか大きい方
小規模宅地等の特例を利用した場合
小規模宅地等の特例は、被相続人(亡くなられた方)が相続開始前までに事業や居住のために利用していた宅地(小規模宅地等)を相続人に相続した場合に利用できる特例です。
この特例を利用することで、当該宅地の評価額を圧縮することができます。
この特例を利用して相続税がゼロになったとしても申告は必要です。
詳しくは国税庁のHP No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
農地の納税猶予の特例
農地の納税猶予の特例は農業を営んでいた被相続人(亡くなられた方)から農地などを相続し、
引き続き農業を営む場合に、その取得した農地等の価格のうち農業投資価格を超える部分に対応する相続税が猶予される制度です。
この特例を使用し、相続税がセロになったとしても相続税の申告は必要です。
詳しくは国税庁のHP No.4147 農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例
特定計画山林の特例
特定計画山林の特例とは、特定計画山林を被相続人(亡くなられた方)から相続した場合に、通常の評価額に95%の割合を乗じた金額を相続財産の価額とすることができる制度です。
この特例を使用して計算された相続税がゼロであった場合は、相続税の申告が必要になるので注意が必要です。
詳しくは国税庁のHP 〔措置法第69条の5((特定計画山林についての相続税の課税価格の計算の特例))関係〕
相続財産を公益法人などに寄付した場合の非課税の特例
相続や遺贈によって取得した財産を国、地方公共団体、公益を目的とする事業を行う特定の法人(NPO法人など)に寄付した場合には、その寄付した財産には相続税が課されないという特例です。
この特例を利用した場合で、相続税がゼロになっても申告は必要になるので注意が必要です。
詳しくは国税庁のHP No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき
おわりに
相続税の申告が不要な場合とその注意点、相続税がゼロであっても申告が必要な場合について記載しましたがいかがでしたでしょうか。
相続税の申告は、個人で行う人もいますが、相続税の計算は複雑で、素人が行うには非常にハードルが高いです。
また、個人で申告した場合、申告後の税務署からの税務調査の確率が非常に高くなります。
個人で申告した場合の税務調査ではほとんどの方が追加納付になるので要注意です。
相続財産が基礎控除額を上回る方や申告が必要な方は、相続税に詳しい税理士に申告書の作成を依頼しましょう。
税理士に依頼すると、税理士のお墨付きをもらえるので、その後の税務調査の確率が減り、相続税の追加納付を求められることも少なくなり、
相続税に詳しい税理士であれば節税の方法も知っているので、税金を極力抑えることができます。
税理士ドットコムは、相続税を専門にしている税理士や相続に詳しい税理が多数いるので、
相続での税理士選びなら税理士ドットコムがおすすめです。
相続税の計算方法についてはこちらの記事で書いています。
わかりづらい相続税の計算の仕組みを公認会計士がわかりやすく解説
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